2012年6月28日(木)・29日(金)に「第1回 中上級者向け講習会」を開催いたしました。

 講師は(株)遊茶代表の藤井真紀子先生です。

 今回は、この春のお茶の審評を中心とした内容でした。中国茶の動向や台湾茶の講義、お水とお茶の関係の探求、中国茶のアレンジの提案等々あり、いつもながら盛りだくさんでした。

 まずは、2012年春の中国緑茶の動向を少しばかり。

予想はしていましたが、やはり価格が高騰しております。2011年と比べても20〜30%の価格の上昇だそうです。

 高騰の要因は、みなさんもお察しされていると思いますが・・・

内需拡大です。消費者物価指数、三公消費上昇中の中国です。近年は上海から帰国すると、大阪の街がとても、とても田舎に思えるほど中国経済が上昇していること、難しい経済誌を読まなくてもわかります。

 また、茶塙人(茶摘みをする人)の確保ができなくなっているそうです。茶塙人は春茶のシーズンで約180万人必要だそうです。今年は132万人の集まりだったそうです。建設ラッシュの中国では茶摘みより賃金の高い建設関連にスイッチする人が増えているそうです。それに伴い茶塙人の人件費の高騰も起きているそうです。なんと、お茶の生産の多い福建省では40〜50%の賃金の上昇だそうです。

茶葉の価格が上昇するのは致し方ないですね。

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 中国茶は手摘みを行うのが基本です。高級茶は条件の整った茶畑で、熟練したものが茶の樹を管理して、ベストタイミングで茶摘みを行う。そして、看茶做茶(茶を見て茶を作る。)どのひとつも欠かすことができないのです。その中で茶塙人が少なくなっていること、大問題です。周りの経済事情と均衡をとることは本当に難しいことですよね。

 茶農家さんも生活していかなければなりません。ですが、価格の高騰は消費者にとっては厳しい現実。

来年の中国緑茶は飲めるのかな?幻にならないように願いたいですね。

ではでは、審評した緑茶たちの一部です。

 値段はうーんと高騰している割には…艶っぽさが足りないというか、なんというか…でした。もちろん、当会に登場してくれている茶葉たちは高級茶の中でもトップレベルのものです。ですが、以前と比べるとパーフェクトといえるものが減ってきているような気がします。

頑張ってほしいものです。

 今回、2008年産のいい状態で保存されていた茶葉たちが登場してくれました。4年も経過しているのに少しの色の変化はあるにせよ、状態がいいことお判りでしょうか?

  2008年六安瓜片    2008年太平猴魁

 2008年は安徽省の緑茶の出来栄えがとても良い年でした。それはそれは、高貴な香り、ふくよかで芳醇な滋味、いつまでも鑑賞していたいと思うような茶殻だったのです。(人間の記憶とは素晴らしいもので、とくに、感動したものに出会った時のことは瞬時に思い出すことができます。)

 4年経過した緑茶なのに、審評でも香り、滋味、水色、茶殻、そのどれもがバランスが取れておりました。これには2つのことを証明してくれています。

 1つ目は保存が的確に行なわれていたこと。

 2つ目は良いお茶は保存に耐えることができること。

お茶を管理されている方、お勉強されている方ならご承知でしょう。

お茶の保存の条件

 ◎光の遮断

 ◎空気の遮断

 ◎温度のコントロール

 ◎湿度のコントロール

 特に緑茶類はこの4つの保存条件が守られなければ、わずか1日で高級な緑茶が格下げになるほど影響を受けやすいのです。新生児をケアするぐらいの気持ちで管理してあげないといけないのです。たった4つの条件なのに保持するのは大変です。そこまで管理して飲むのはめんどくさいとお思いの方もいらっしゃるでしょう。でも、保存状態のいいお茶を適切に淹れると、香り、滋味の広がりは半端ではなくて、感動を覚えることになります。ご家庭での保存は厳密にはできないかもしれません。

でも、可能な限り保存にも気を遣ってあげてください。

また、フレッシュなうちにお茶を飲んでください。

そして、茶葉の管理が行き届いたお店のお茶を選択してみてください。

大切に育てられたお茶たちへの敬意に繋がると思います。

いくら保存が完璧でも茶葉が保存に耐えられる良い状態でないといけないので、是非ともいい茶葉を選んでくださいね。

丁寧に作り上げてもらった茶葉達を、販売する側、消費する側は丁寧に保存をしてあげる。それは美味しく飲むための努力です。こう考えると的確な保存は素敵なプロセスに思えてきますね。

2008年度の緑茶はほんとうに素晴らしい茶葉たちでしたし、良好な保存条件が加わったからこそ、4年も経過した緑茶が良い状態で残っていたという結果を見ることができました。

良質の茶葉を良い管理をした結果を審評できた貴重な体験でした。同時に審評を続けてきた醍醐味を感じ取ることのできる幸せなことでした。

ちょっと長々となりました。(^_^;)

そして、この2日間は台湾茶の審評三昧でした。台湾茶だけで40種の審評です。

2日目の途中からはご参加のみなさまは意識が朦朧と…

 特に、球形をした茶葉の外観を見ることは本当に難しいのです。だってそっくりなんです。下の茶葉は阿里山高山茶です。どの茶葉が一番高いかわかりますでしょうか?

 当会のご参加されている方で長い方では8年目に突入されている方がいらっしゃいます。審評の経験も長く、常にお茶のお勉強も重ねられていらっしゃいます。その方たちでも首をひねるぐらい外観を見ただけは評価するのが難しいのです。

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 審評は第1段階で外観を見る(乾燥した茶葉の状態で評価)、第2段階で内質を見る(茶葉にお湯を注いだ状態を評価)に大きく二つに分かれます。(詳しくはこちらをご覧ください

 こういった外観ではわかりにくいお茶は第2段階の内質をみることを慎重に行います。お湯を注いで茶葉を蒸らした後に、香り、滋味、水色、茶殻を見ます。

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 外観からは考えられないほどのお茶の個性を見ることができます。香りが高いか低いか、異臭があるか否か、香りの質、持続性、水色の透明度、味のバランスや厚み…もっとたくさん見て判断していきます。

外観では甲乙つけがたいお茶も内質では全く違う個性を出してくれます。高値の付くお茶もあれば、付かないお茶もあります。

 そういったお茶を選び、淹れる、販売する、いや、値段をつける。的確な審評を行うことの重要性を改めて感じさせられました。

 お茶の審評は日本ではまだまだ普及しておりません。ですが、継続してお茶の評価をすることを続けることで、的確なお茶(品質、値段を含めて)を選択できるようになります。こういったお茶を消費者の方が手にできたらお茶の楽しみを改めて感じとっていただけます。ぜひとも、審評文化が広がればいいなと思ったのでした。

 白茶、黄茶の審評です。白茶は白茶らしく、黄茶は黄茶らしく、個性も品位も保ってくれておりました。素晴らしかったです!来年も期待できます!

 お水とお茶の探求のご報告を少しばかり。

今回は、

・浄水器を通したお水

・浄水器を通したお水に備長炭を一晩入れたお水

・浄水器を通したお水に麦飯石を一晩入れたお水

・市販のナチュラルミネラルウォーター

で、

・中国緑茶(黄山毛峰)

・日本緑茶(鹿児島緑茶)

・台湾茶(文山包種)

・台湾茶(阿里山高山茶)

を、審評いたしました。

びっくりするほど違いが出でました。麦飯石を入れたお水はどのお茶も、香りが高くなり、滋味では雑味が無くなり、芳醇になったのです。備長炭を入れたお茶はお水の生臭みが消え、滋味が横に広がる傾向がありました。

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  阿里山高山茶

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  鹿児島産緑茶

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  黄山毛峰

 *文山包種の画像がありませんでした…画像で見ると違いがわかりにくいのが残念です。

  左から、浄水器を通したお水、浄水器を通したお水に備長炭を一晩入れたお水、浄水器を通したお水に麦飯石を一晩入れたお水、市販のナチュラルミネラルウォーター

 次回の講習会でも、お茶の種類を変えて探求していく予定です。濃い目のお茶達がどんな変化を見せるか楽しみです。

 麦飯石がとても気になる存在になりました。しばらく使用しながら情報を得ていきたいと思っております。

お茶を美味しく淹れる努力は続きます〜

 みなさん!アイデアがありましたら教えてくださいね。

 次回の講習会は秋に開催する予定です。大陸青茶、紅茶、黒茶の審評が主となります。

 開催の2か月前にHPにて告知いたします。是非とも、この熱い審評の世界にいらしてください。

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